名演から学ぶ、ジャズアドリブ研究

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"Blue Bossa" by Dexter Gordon

 今回はトランペット奏者ケニー・ドーハム作の名曲「ブルーボッサ」を取り上げます。

 オリジナルはテナーサックス奏者ジョー・ヘンダーソンのデビュー作である名盤「ページ・ワン」の一曲目に収められています。

 ここでサイドマンとして参加しているドーハムが書き下ろしたボサノバのリズムとマイナーのメロディが印象的なナンバー。

 考えすぎかもしれませんが、自分名義のデビュー盤、しかも一曲目にサイドミュージシャンが作った曲を収録するというのはよほど曲が気に入ったのか、何となくジョーヘンの人柄を感じる所ではありますね^^

 60年代初頭のゲッツ=ジルベルト以降、アメリカのジャズ界でボサノバ調の曲は多く作られましたが、そんな「made in USA」のボサノバチューンの中でこの曲は一番有名かも知れません。

 しかし本家ブラジルのトム・ジョビンたちが作ったボサノバのスタイルとは、相当印象が違います。

 ジョビンの曲は基本的にジャズ的なコード進行が元になっていますが、もっと複雑でテンションノートをメロディに使うなど緻密な計算の上に出来た曲、というものが多いです。

 対してこの「ブルー・ボッサ」は、いかにもジャズマンがアドリブの素材としてササッと作った曲という感じですね。

 まるで冷蔵庫に残っていたあり合わせの材料で作ったおいしいチャーハンのような、そんな手際の良さを感じます。

 なかなかこういうコンパクトにまとめた小曲って作るのは難しいと思いますよ。ドーハムのセンスが光る名曲ですね。

 

 ジョーヘン本人の演奏はかなり抽象的な演奏で個性的すぎるため、今回の動画はビバップテナーの巨匠デクスター・ゴードンの演奏を使わせてもらうことにします。

 レガート(滑らか)なデックスのテナーは楽器を問わず、ジャズ演奏者にとって最高の手本。ここでの演奏もおいしいフレーズ満載です。

 動画はB♭譜でDm。実音ならkeyはCmですね。

 まずはソロに入って1コーラス目のサビ(bridge)、9~11小節のⅡⅤⅠフレーズを見てみましょう(1:32~1:35)。

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  Fm7ではFドリアンスケールを上昇していき、B♭7では長6度からルート音まで半音で上がったり下がったりしています。

 そしてこのB♭7の3~4拍目でG、E♭、C、A♭という、A♭M7のコードトーンを下降しています。

 ここでデックスはおそらくB♭7()→E♭M7(Ⅰ)という進行を、B♭7()→A♭M7()→E♭M7()という想定で吹いているようです。

 これが結果的にB♭7にとってCが9thに、Gが13thというテンションになります。

 ドミナントコード上でサブドミナントコードの構成音を弾く」というのがミソですね。是非フレーズに取り入れましょう。

 続いて3コーラス目の出だしです(2:07~2:09)。

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 4分の4拍子上で8分の6拍子を意識したポリリズミックなフレーズです。8分音符が2つや4つではなく、3つや6つでひと固まりになっており、それが順次下降していく形をとっています。

 トニックコードですが音の並びはDドリアンスケール。Em、Dm、Am、GM、Dmというそれぞれのトライアド(三和音)を5度から下降しています。

 トニックマイナーのDm7にドリアンモードを設定している訳ですから、Cmへ転調している雰囲気が感じられ、音の並べ方とも相まってこの部分だけ不思議な浮遊感があります。

 音を意識的にハズすアウトフレーズの良いお手本ですね。

 最後にソロ5コーラス目のマイナーⅡⅤのフレーズです(3:08~3:13)

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 A7のドミナントコード上でのフレーズですが、完全5度のEと減5度のE♭があることから、コンビネーション・オブ・ディミニッシュスケールを吹いているようです。

 音が半音→全音→半音→全音と交互に並んでいる人工的なスケールで、ドミナント上でのスケールとしてはオルタード・ドミナントスケールと並び、ジャジーな演奏に欠かせないスケールです。

 

 

 当ブログの内容や理論面で分からない事、疑問点などがあれば、是非ご質問下さい。

 また音楽理論を本格的に勉強したい方のために理論書を作りましたので、興味のある方は御一考を。

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